まず過熱水蒸気とは

飽和水蒸気と過熱水蒸気

 ご存知のように、水(液体)を温めると水蒸気(気体)となります。大気圧下(1013hpa)では水の沸点は100℃で、液体と気体の水が混在している状態にあります。このときの水蒸気を飽和水蒸気と呼びます。常圧下で器に入れた水はどんなに熱しても100℃以上にはならず、与えた熱エネルギーは全て液体の水を蒸発するために使用されます。このとき発生した飽和蒸気を圧縮機などの装置(ボイルーシャルルの法則の応用)で更に加熱をすると100℃を超えた過熱水蒸気が出来るわけです。
 飽和水蒸気は最初、無色透明ですが、大気中に放出されるとすぐに冷やされ水滴となり白く見えます。一方、過熱水蒸気は、大気中に放出されても水滴にならない無色透明な乾燥蒸気です。
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過熱水蒸気のエンタルピー

 左図は温度変化による水の状態遷移をエンタルピー特性として示したものです。左図の橙色の部分が飽和水蒸気状態、赤色の部分が過熱水蒸気の状態です。
 水色のカーブは、加熱空気の特性です。過熱水蒸気の方がエンタルピーが高く、物質に接触した際の発熱量が大きいため、熱分解する上で加熱空気より有効であることがわかります。

過熱水蒸気の利用価値


過熱水蒸気を熱伝達の媒体に

 これまで過熱水蒸気は先の蒸気タービンのエネルギー源のように加圧により熱エネルギーを貯め、運動エネルギーに変換する媒体として利用されてきました。しかし昨今は、熱伝達の媒体として注目されています。過熱蒸気の持つ高温かつ水蒸気状態である利点からジューシーさを保てる食品調理器具としての応用も見られます。
 過熱水蒸気の熱伝達の特徴として凝縮熱伝達があります。これは過熱水蒸気の粒子が処理物に接触すると温度差によって液体に戻ろうとしますが、このとき熱エネルギーを放出します。そのカロリーは2257kJ/kgにも及びます。水分を多く含む有機物を熱分解する場合、この熱伝達は非常に有効です。
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過熱水蒸気の生成方法と課題

 過熱水蒸気を生成する方法として、電熱線による加熱、電磁誘導加熱、化石燃料による燃焼加熱、原子力加熱などがあります。過熱水蒸気の利用目的により最適な方法を選択することとなりますが、一般的に装置の冷却システムや安全装置の併設など、装置規模が大掛かりになる傾向があります。特に過熱水蒸気温度の高温化については、要素技術の敷居が高くなること、設備設置の面積が必要なこと、安全管理を行うことなど課題が多くあります。右の図は、経産省新連携プロジェクトにて開発した弊社特許技術による試作機です。小型・高出力・シンプル構造ですが、常圧稼働ですので運転面でも安全安心です。
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